貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 雲は晴れ、燦々と日は照り、船は木っ端微塵になっている。

 一緒に船に乗っていた兵士たちは向かいの島に流れ着いたようで、向こうから旗らしきものを振っているのが小さく見えた。

 それに手を振り返すアローナにレオが言う。

「ジンと二人だったら、まるで二人きりの婚前旅行のようだったろうにな」

「そうですか。
 では、今は家族旅行ですね」
と適当に流しながら、アローナは島を見た。

 自分では泳いでいくのは無理そうな距離だ。

 そして、砂漠に囲まれたメディフィスの兵たちは泳げないようだった。

 やれやれ、とアローナはまた、なにかめぼしいものはないかと海岸を探しはじめた。

 大きな流木を引きずろうとして、振り向く。

「いや、無理だ」
とまだ、なにも言ってはいないのに、しどけなく横になっているレオが言った。

「私は女性より重いものは持ったことがない」
「それ、けっこう重いですよね……」

 少なくともこの流木よりも、と言いながらアローナは思っていた。

 この元王様、盗賊よりも使えない……。