貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~


 ……私に倣って、野生に返って逞しくなるの、おかしくないですか?
とアローナは思っていたが、せっかく感謝されているのだから、黙った。

「ところで、少し離れたところから、こちらを窺っているあの船はなんだ?」
と頭は後ろに広がる大海原を指差す。

 一隻の大きな船と、二隻の小型船が、近くに停泊していた。

 アローナは目を細めてそちらを窺いながら言った。

「……あれはですね~。
 たぶん、メディフィスの船ですよ」

 こっそりやってきたつもりらしく、紋章などは掲げていなかったが、たぶん間違いない。

 今、小型の船に移ったシャナらしき人物が、両肩に鷹とインコを乗せて、こちらに向かってきているからだ。

 ……この場所を知らない頭のインコはともかく、うちの鷹はなんで自力で飛んで戻ってこないんだ。

 船に乗り、シャナの肩に乗り、楽してやってこようとしている。

 奴は、すでに伝令鷹ではない……と思ったとき、鷹とインコとともにシャナが島に上陸してきた。

「やあ、なんか村っぽいものができてますね」
と海岸沿いに、ずらりと並んだ木と葉っぱの小さな家を見てシャナは呟く。

「ごめんなさい、手間かけさせて。
 ありがとう、シャナ」
とアローナが言うと、シャナは、

「いえいえ。
 お安い御用です。

 たっぷり報酬もいただきましたしね。
 さあ、このインコに書簡をつけ、飛ばしてください」
と言いながら、頭にインコを渡した。

「そこで兵たちが待ってますので。
 あそこまでインコを飛ばしてください。

 すぐに助けが来ますから」
と船を指差す。

「……いや、もういい。
 そんな周りくどいことをしなくても」
と待機中の船を見ながら、頭は言った。

「ありがとう、アローナ。
 私とインコのメンツを立ててくれて」
と頭はアローナの手を握ってくる。

「今度なにか困ったことがあったら言え。
 いつでもお前のために働こう」

「頭、ありがとうございます」
とアローナは微笑み、言ったが。

 シャナが船の方を振り向きながら、頭に言っていた。