貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「アハトに都合の良さそうな人物など、今、いないだろう。
 だが、まあ。
 警戒しておく方がよいか」
とジンが油断のない目でこちらを見る。

「では、その娘、こちらでお預かりしておきましょうか」
とジンの後ろから騎士が言うと、ジンは彼を振り返り言った。

「何故だ」

「いやだって、危険じゃないですか。
 アハト様の手前、一応、受け取りましたけど。

 もう飽きたとか言って、始末しちゃった方がいいんじゃないですか? その娘」

 ひいっとアローナは息を呑む。

「アハト様もなにも言わないと思いますよ。
 ああ、自分の悪事がバレたんだなと思って沈黙するだけですよ。

 まあ、アハト様のことだから、懲りずに、すぐ次の娘を送ってくるかもしれませんけどね」

 さあ、渡しなさい、という感じに騎士はジンに迫ったが、
「……いや」
とジンは言う。

「……いや?」
と騎士が強めに訊き返していた。

 気のせいだろうか。
 時折、騎士の人の方が上に立って物を言っているときがあるような……。