ホッとしたとき、頭が、

「ありがとう、アローナ!
 これで、うちのインコのメンツが保てるっ」
と感激したように手を握ってきた。

 いや、インコがメンツを気にするかは知らないが……。

 単に鷹だけ来ちゃったせいで、頭が寂しそうだったからですよ。

 そう苦笑いしたとき、頭はアローナの手を握ったまま、言ってきた。

「……ところで、お前、今の船に乗って逃げれば良かったんじゃないか?」

 あ~、とアローナは去りゆく兄の船を見た。

 今から泳いで追いかけるのは無理そうだった。

「いや~、でもまあ、みなさんを置いて逃げるのもなんですしね。
 共に此処から脱出しようと作業した仲間ではないですか」

 ねえ、とアローナは船を直している者たちを振り向いて言う。

「アローナ様っ!」

 アローナに微笑みかけられ、何処までもついて参りますっ、という勢いでアローナの名を叫ぶ盗賊たちは、いや、あんた、指笛吹いてただけなんじゃ……とは誰も突っ込まなかった。

 アローナ様っ、とみなに慕われたアローナは暮れゆく空を見上げて言った。

「今宵は、此処で夜を明かさないといけなくなりそうですね。
 今から夜露をしのげそうな寝床を作りましょう」

「はいっ、アローナ様っ」

「待て。
 なんでお前が(かしら)みたいになってる……」
と頭が横で呟いていた。