「すみません。
 その鷹、貸してください」

「なにをするのだ?」

 アローナは寂し気な(かしら)をチラと見、
「頭のインコを呼びにやろうかと」
と言った。

「アローナッ」
と頭は歓喜の声を上げる。

 いや、私の鷹だけ来ては、なにか申し訳ない気がするからな、と思いながらアローナはバルトに訊いた。

「……ところで、お兄様、エンは?」

 すると、バルトは渋い顔をし、言ってくる。

「お前が次々、菓子を焼けというから、(かまど)につきっきりだ」

「すみません。
 今度、お礼しますから」
と言うと、うん、と頷き、兄はまた小舟に乗って行ってしまった。

 アローナは兄から借り受けた鷹に、頭とともにしたためた書簡を運ばせる。

 盗賊の隠れ家のひとつに行き、そこからインコを連れて、この島まで来るように頼むための書簡だ。

 フェルナンにしようかと思ったが、シャナに頼むことにする。

「シャナよ、シャナ。
 わかるかしら?」
とアローナは鷹に話しかける。

 シャナの許まで行かなくとも、ジンのところにたどり着けば、まあ、なんとかなるだろう。

 アッサンドラに帰ってしまったり、最悪、今出たばかりの船にいる兄のところに戻ってしまう可能性もあったが。

 鷹は大きく舞い上がり、とりあえず、船を飛び越えていってくれた。