貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



「ともかく、そんなこと今更許しませんよっ」
とアハトが言い出したので、アローナは思わず、走っている馬車から、ぽん、と後ろ向きに飛び降りてしまった。

 ちょうど角でスピードを落としていたからだ。

「あっ、こらっ」
と言うアハトの声が聞こえる。

 しまった……。

 逃げ出してしまった。

 王への反逆罪で捕まるだろうか。

 それとも、約束を(たが)えたと、アッサンドラを攻め滅ぼされるだろうか。

 いや……、ジン様はそんなことなさらないだろう。

 っていうか、本気で逃げるつもりなんてなかったんだが。

 アハト様がいきなり怒りだすから、生まれ育った城の恐ろしい家庭教師と似て見えて、つい。

 どうしてくれるんですか、アハト様。

 逃げちゃったじゃないですか……、と飛び降りてしまった手前、走り去りながらも、アローナは困っていた。