ジンの宮殿に馬車が近づいたとき、アローナは言った。
「すみません。
止めてください」
「何故ですか。
下手なところで止まっては、もし、あなたを狙う輩がいたら、襲撃の機会を与えることになりますが」
「いや~、なんだか不安になってきて」
と道の先にある宮殿を見上げてアローナは呟く。
「アハト様もレオ様も私が賢い妃や良き伴侶になるとおっしゃってくださいますが。
私にはそのように思えません」
石畳の上を走る馬車の音を聞きながら、アローナはアハトの腕をつかみ言った。
「ちょっと……いや、今すぐ、自分を見つめ直しに旅に出て来たりしたいんですけど~」
「なにぬるいこと言ってんですか。
っていうか、あなた、散々旅して、メディフィスまで来たんでしょうがっ」



