「では、ジンと、菓子を焼いたお前のところの女官と、兄によろしくな」
帰り際、レオ自ら宮殿の入り口のホールまで見送ってくれた。
「はい。
伝えておきます。
お酒、気に入られたようですね。
兄にまた送らせますよ」
とアローナは笑う。
「早く、参りますよ、アローナ様」
とアハトは急かしながら、レオに挨拶し、先に出る。
開いた扉の向こうから、夕暮れの日が強く差し込んできた。
アローナは出て行きかけて、振り返り訊く。
「ところで、レオ様。
美女千人と酒樽千個。
どうなさる、おつもりだったんですか?」
レオは笑い、
「……お前はジンの良き伴侶となるだろう」
とアローナにとって、嬉しいんだか嬉しくないんだか、よくわからないことを言ってきた。



