貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



「アッサンドラのアローナ姫か。
 そういえば、父の許にやってくる途中だったな」

「ええ。
 忘れてましたね」
とジンと騎士が話すのを聞きながら、

 ……もう帰っちゃおっかなーとアローナは思っていた。

 メディフィスに攻め込まれないよう、アッサンドラは前王の要求を飲み、姫を人質として後宮へと送ったのだが。

 遠いからな、メディフィスは……。

 メディフィスに向かい、旅をしている間に、情勢は変わり、アローナはもう此処に来なくてもよくなっていたようだ。

 じゃ、失礼して、とアローナは寝台から下りようとしたが、後ろに目でもあるのだろうか。

 ジンはすぐに振り返り、
「待て」
と手にしていた長剣をこちらに向けた。