一応、知らせは出していたので、すぐに迎えの衛士たちにより、謁見の間に通された。
そこには、ジンが座る玉座ほどは大きくも高くもないが、それに類似したものがあった。
そこに腰掛けるレオを見て、まだまだ王様ですよね、と苦笑いしながら、アローナは運ばせた手土産をレオに見せた。
「どうぞ、レオ様。
ジン様と奪い合って勝ち取ってきた菓子です」
と言うと、アッサンドラから連れてきた若い侍女が菓子の入った銀の箱を手に前に進み出る。
玉座の肘掛けで頬杖をつくレオは、
「なんだかものすごく価値がありそうに聞こえるが……。
ただの焼き菓子だろう。
お前は口が上手いな」
と言ってきた。
「それと」
とアローナは振り返り、並んだ大きな陶器の酒壺を手で示して言う。
「兄が置いていった酒です」
「……五つしかないようだが。
中に美女でも入っているのか」
いや、酒樽千個なんて我々には用意できませんからね、とアローナが思っていると、
「では、今から入れましょう」
と言いながら、アハトがアローナの腕をつかんできた。



