貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「娘よ。
 名はなんという。

 ああ、しゃべれぬのだったな」

 アローナです。

 ア・ロー・ナ、と口を大きく開けて教えようとするが、じっと見ていたジンは、
「わからぬ」
と言う。

 いやいや、わかってください。

 アローナはジンが注目してくれるように、おのれの唇を指差し、ア・ロー・ナと言おうとした。

 だが、いきなりその唇を塞がれる。

 そのまま寝台に押し倒された。

 ひーっ。

 ジンはその美しい黒い瞳で間近にアローナを見つめて言ってくる。

「娼婦の相手などしたことはないが。
 お前はなんだか可愛らしいな。

 なにもしないのもお前とアハトに悪いだろう」

 いやいや。
 なにもしてくださらなくて、結構なんですけどっ、とアローナはジンの額に手をやり、押し返そうとした。

 ほう、とジンは感心したように頷く。