貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 レオはチラとアローナを見、
「お前の父親のように、民を傷つけまいとして。
 戦ってみもせずに、娘を差し出すハメになったりするだろうが」
と言ってくる。

 うっ。

「やさしすぎると家族も守れない。
 そして、結果的に民も守れないこともある。

 ジンは私に比べて温厚だということは、商人たちを通じて各国に広がっていくことだろうよ」

 奴らの情報網はすごいからな、と言う。

「今だとばかりに、反旗をひるがえして、上に立とうとする同盟国も出てくるやもしれぬ。

 王は冷酷すぎるくらい冷酷でなければ。

 そして、そういう噂が近隣諸国に(とどろ)くくらいでなければ、ほんとうの意味で国を守ることはできんのだ。

 まあ、民はジンの方を支持しているようだが。

 何処かの国に攻め込まれれば、いずれ考えも変わるだろう。

 そもそも、私を殺していない時点で、ジンは甘い」

「そうかもしれませんが……。
 私は、そんなジン様の方が好きですね」

「ほほう。
 お前は、ジンにベタ惚れなわけだな」

「いっ、いえっ。
 そういうわけではないのですがっ」

「レオ様」
とアハトがレオの前に進み出る。

「私も別にジン様についたわけではありませんぞ。
 心はいつもレオ様とともにあります」

 あっ、チクリますよっ、とアローナはアハトを睨むが、アハトは知らん顔をしていた。

 まだまだレオが勢いを盛り返す可能性もあると見て、媚を売ってみたのだろう。