貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 あれが、ジン様のお父様。

 道理で、私についてきた警備の人たちが驚いたように窺っているはずだな、とアローナは思う。

 それにしても、うちのお父様と同じくらいの歳のはずなんだが、全然、そんな風には見えないよな、と思いながら、上から眺めていた。

 (まばゆ)いくらいに美しい男だ。

 でもなんかキラキラしすぎて落ち着かないから、私はジン様でいいな、とアローナはジンに殴られそうなことを思う。

「下りて話してみなさいよ。
 別に噛みつきゃしないわよ」
とエメリアは言ってくる。

「……あの、もしや、私に酒宴の相手をしろというのは」

「レオ様のに決まってるじゃないの。
 店の女たち出して、なにかヘマでもしたら、無礼討ちにされるかもしれないからね。

 あんただったら、息子の嫁じゃない。
 殺したりはしないでしょ。

 そんなことしたら、幽閉じゃすまなくなるし」

 いや、何処も幽閉されてませんよね……と思いながら、上から見ていると、近くにいたアリアナに耳打ちされたレオは、張りのある声でアローナに呼びかけてきた。

「ほう。
 お前がアローナか。

 到着を今か今かと待っていたのに、ジンのものになってしまったようだな。

 返却するようジンには言ったのだが」

 私は本かなにかか……。