貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~



 エメリアに導かれ、アローナは黄金の間から出て行った。

 ところで、何処が黄金だったのかな、と思い返すと、あの妙な犬の神様っぽいものしか思い当たる節はなかったのだが、どうなっているのだろうかな。

 そう思ったとき、エメリアが足を止め、下を見た。

 吹き抜けの下、玄関ホールに数人の護衛に囲まれた男がいた。

 こちらを見上げる。

 金髪に翡翠の瞳。

 ジンと似たような格好をした男だ。

 ということは、権威ある人物? と思ったとき、エメリアが言った。

「あれがあんたが嫁入りしそこねたメディフィスの前王、レオ様よ」

「えっ?」

 エメリアの言葉に、アローナは手すりから身を乗り出し、下を見た。

 美しい男だが、ジンとは似ていない。

「ジン様はお母様似なのでしょうかね?」

「さあ?
 ジン様も前のお妃様も見たことないから知らないわ。

 王族の女は此処には来ないからね。

 あんたくらいのもんよ。
 のこのこやってくるのは」
とエメリアは言う。

 いや、のこのこ来たのは今回だけで、前回は連れ去られて来ただけですからね~、と思ったが、黙っていた。