「で、なんで戻ってきたんだい」

 アローナたちが辿(たど)り着いた砂漠の中に突然ある夢のような建物からは、漆黒のドレスを着た小柄な老婆が出てきた。

 アローナを見て渋い顔をし、

「気に入らなかったのかい。
 返品するのなら、更に金を払いな」
と無茶を言う。

「そうではない」
とアハトはこの娼館の女主人である老婆に言った。

「実はこの方はメディフィスの新しい王妃となられるアローナ姫であったのだ」

「ほう、そうだったのかい。
 まあ、物腰からして只者(ただもの)ではないと思っていたよ。

 じゃあ、王妃様を保護していた礼をもらおうかね」

 アハトがこちらを向いて、
「だから、此処に来るのは嫌だったのです」
 一体、此処になにしに来たんですか、とアローナに文句を言ってきた。