貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 ともかく、早く此処の文字を覚えなければ、意思の疎通ができないと思ったアローナは、本を探し回る。

 だが、本は最初に腰を落ち着けた寝台のサイドテーブルの下にあった。

 無駄な時間を過ごしてしまった……と思いながら、本を広げる。

 ところどころ見たことのある綴りもあったが、大部分がわからない。

 もっと真面目に勉強しておけばよかった、と後悔しながら、寝台で本を見ていたが。

 つい、瞼が重くなる。

 オアシスでさらわれて、娼館に売られ。

 腰を落ち着ける間もなく――

 いや、娼館に落ち着けなくていいんだが。

 すぐに宮殿に連れてこられて。

 ああ、なんか疲れた……とアローナはそのまま瞼を閉じてしまった。