貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 もしかして、前の王様に近しく仕えていたものたちにも暇をとらせたりしたのだろうか。

 すると、このアハトという男も、旧体制側の人間で、若い王のご機嫌を取ろうとしてるとか?

 そうアローナは推察する。

 騎士は溜息をつき、
「まあ、では、一応、王にお伺いを立ててみますよ。
 期待しないでくださいよ、アハト様。

 美しいだけで心が動くような王ではないですから」
とアローナをチラと見て言う。

「まあ、この娘で気に入らなかったら、また次を連れてきますよ」
とアハトは笑い、

「懲りないですねえ」
と騎士に言われていた。

 いやいやいや。
 気に入らなかった場合、私は……っ?

 王の慰み者になるのも嫌だけど、いきなり街中に放り出されても困るんですけどーと思っているうちに、王宮の一室に通された。

 白い石でできた床と壁。

 真っ白なシーツに天蓋つきの寝所。

 湯の流れ続ける湯浴みをする場所まである。

 南国の艶やかな花が白く滑らかな石の湯船の縁を彩り、その濃密な香りが部屋全体に漂っていた。

 むせ返るような香りで目眩がするな、と思いながら、しばらく、部屋のど真ん中にどうしていいかわからず立っていたが。

 誰も来ないので、湯に手をつけてみたり、ぼうっとしてみたりしたあとで、寝台に腰掛ける。

 ……何故、こんなことに、と思いながら。