次の晩、寝室にやってきたジンはどっかりと寝台に座り、重ねられた大きな枕に背を預けて言ってきた。
「さて、アローナ。
今夜の演目はなんだ」
ちょっと諦めたような口調だった。
いやいや。
催し物をやってるわけじゃないんですけどね、毎晩、と思いながら、アローナはフェルナンに頼み、カーヌーンを用意してもらった。
指で弾いて鳴らすと、美しい音の出る弦楽器だ。
「ほう。
お前は、カーヌーンが弾けるのか」
「はい、弾いてみます」
「……弾いてみます?」
と訝しげに言ったジンは正しかった。
カーヌーンからはロバが踏み殺されたような音が出る。
何度も何度もロバが踏み殺される。
「もうよい……」
とジンが言ったので、アローナは仕方なく、シャナを呼んだ。



