貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

 視線を馬車の中に戻すと、同じように外を見ていたアハトと目が合った。

 なにか言わねばと思ったが、声は出ない。

 仕方なく、アローナは身振り手振りと顔つきで、
「素敵な街ですね」
と伝えてみた。

 アハトは深く頷き、
「わかった。
 買ってやろう」
と言って、馬車を止めさせ、屋台で菓子を買ってこさせた。

 いや、違うんだが……。

 だが、意外にいい人だ、とピンク色の甘いなにかでコーティングしてある渦巻状の菓子を手渡されて思う。

 ありがとうございます、と身振り手振りで伝えてみたが、今度も伝わったかはわからなかった。

 ひとりで食べるのもな~と思い、半分ちぎって、アハトに渡そうとしたが、
「いや、いい。
 食べなさい」
と言われる。