『…ぼく……しにたくないよ、…とうさん……』



まだ6歳の少年。

この世に生を持って生まれ、たったの6年しか経っていなかった。

母親がどこかの組に殺されてから、この男は狂ってしまった。



『そんなの俺だって同じなんだよ…ッ!!なんで俺は誰からも愛されねえんだ…!!なんで俺じゃあ駄目なんだよ……!!』


『っ…、』



寂しい人なんだ、とても哀れで可哀想な人だ───…。


少年が穢れなき眼差しを持っていたのは昨日まで。

また違ったふうに見える目でさえ、父親にそんなことを思ってしまった。



『剣の野郎ばっか幸せになりやがってよぉ、許せねえよなァ……、
俺たちは同じ場所に立ってたはずだろ……なぁ…、』



あぁ、だめだ。
ぼくは、…僕はこの男に殺される。


父親に、ころされるんだ。


襖の先から昇った日の出が今まで見たどんな景色よりも綺麗だっから。

ツゥゥーーーと、柔い頬に雫が落ちる。



『慎二(しんじ)…ッ!!てめえの子に銃口を向けてんじゃねえッ───!!』


『うがぁッッ…!!!』



その光の先から現れた1人の男が、父親を蹴り飛ばした。


畳に転がった拳銃へ伸ばす手はもう、自分の知っているものではなかった。

目の前に息子がいるというのに、男は必死に命を奪うそれを手繰り寄せている。