まさかお褒めの言葉がもらえるなんて。

「なんのお題でやったんだ」と、視線で聞かれたために少し瞳を逸らしながらも答えた。



「……那岐。」


「…俺か?」


「うん、那岐をイメージしたよ」



そしたらスイスイ手が動いちゃって。
気づけばこの作品が完成されていた。

あまり派手に着飾ってはいなく、シンプルなもの。

花もたくさんの種類を使っているわけではない。


それでも表現力は確かに今までで一番かもしれない。



「いつもいろいろ教えてくれるから…そのお礼に」


「…お前がやりたくてやってるわけじゃねえのにな」


「ううん、毎日いろんなことが知れて楽しいよ」



たまに施設のみんな元気かなぁとか、ひとりで入るお風呂が心細く感じてしまったり。

たったひとりで眠る広すぎる部屋に落ち着かなかったりは今でもあるけど。


でもここに居ると、“天鬼”という名前を毎日誰かが口にしてくれる。

その度に私の本当の場所は本来ここだったんだって、最近になって思えるようになってきていた。



「お前はよ、昔のこと…覚えてたりするか」


「昔…?」


「最初の頃はな、お前はここで暮らしてたんだ」