「ねぇ、私そんなに変だった…?」
「…さぁな」
そう言いながらも小馬鹿にするように思い出し笑いをして、お猪口をくいっと傾けた那岐。
そのあとは晩まで酒の席。
その間ずっと那岐の隣にちょこんと座って、呼ばれれば御酌をしに向かう。
そんな先で組長に似てるだのお頭に似てるだの、度々言われては愛想笑い。
「笑った顔がな、美鶴さんにそっくりだ」
そしてその都度、新しい名前が浮かんだ。
それは明らかに女性のもので、みんなして私に「美鶴(みつる)」という女を重ねてくるものだから。
さすがに何となく予想はしてしまう。
それは、母なんだろうなって。
「美鶴さんはなぁ…元から病弱でね。お嬢さんを産んで数日後に……」
「そう…なんですか…」
母親の話をされているはずなのに、やっぱりどこか他人事のように聞こえてしまう。
それがどこか複雑で、ちょっと嫌。
こんなにも特別扱いされて歓迎されているのは、組長の孫だからで。
そんなものが無ければ、私は親のいない施設育ちという肩書きを一生貼り付けていたのに。