「へぇ横浜から!いいとこですよね、海もあるし山もあって!」


「そうそう。一応、この春から社会人?だから就職みたいなものでね」



確かにまだ若いお兄さんだ。

那岐とあまり歳が変わらなそうだなぁと思っていたら、どうやら彼より1つ下らしい。

でも那岐にはない愛嬌と、誰に対しても発揮される柔らかい雰囲気を持ってる人だ。


それに顔もかなーり整っている。

これは明莉が好きなタイプと見た。



「君はまだ高校生だよね?…絃ちゃん」


「え…、どうして私の名前───…あ。」



茶色を靡かせた緩やかなパーマは軽くセットされている。

どうして私の名前を知っているのかと浮かんだ疑問は、目の前に広がった大きな門に吹き飛んでしまった。


まさかの一緒に話して歩いてただけで屋敷に到着するとは。



「あり?もしかして着いちゃった?」


「…どうもありがとうございました…?」



別に送られていたわけではないけど、でも到着したことは確かで迷子から逃れられたのも確か。

とりあえずお礼は言っておくべき。


しかし門の中に踏み入れた足は、なぜかぜんぶで4つあった。



「……あのぅ、ここ敷地内なんですけど…、」


「はーいお邪魔しまーす」


「えっ、部外者立ち入り禁止っ…!」