水縹色(みはなだいろ)の春【2】

「なにやってんの?」

低い声。

怒ると少しかすれるその声。

心地いい声。

どうしてあなたなの…。

「るい…。」

るいは、私から男を引き離す。

「嫌がってんじゃん。」

男がるいの胸ぐらを掴む。

「いきなり割り込んできて何?すげぇ邪魔なんだけど。」

るいも男の胸ぐらを掴み返した。

「今すぐうせろ。」

そう言って物凄い力で男を引きずった。

私は慌てて、るいを止めた。

男は何も言わずに、その場から一目散に逃げて行った。

るいは、再び自分の部屋に帰ろうとする。

「るい!助けてくれてありがと!」

るいは振り返り、ただじっと私を見つめる。

少し髪の毛が伸びていて、大人っぽか感じた。

それ以外は、大好きだったあの頃のままだった…。

「お前、それなりに遊んでんのね。」

…え?

「違うよっ!私はこころと2人だと思ったら、知らない男の人がいて…。」

「ビッチ。」

そう言って鼻で笑われた。

なによそれ…。

「こんな時間に男女でいるなんて、お持ち帰りされてもおかしくねぇだろ。
ちょっとは気をつけろよ。」

「たかねだってこんな遅くに遊んでるじゃん!」

「俺はあきらと来たんだよ。」

親友のあきらと2人で来ていることを知って、少しホッとする自分がいた。

もしかして、女の子と来てるんじゃないかと思ってたから。

「じゃ、俺行くわ。じゃーな。」

「…うん。バイバイ。」

るいの後ろ姿が悲しく見えた。

呼び止めることはできたはず。

でも、できなかった。

今呼び止めてしまったら、またあの頃みたいに辛い思いをしてしまうんじゃないかと思い。

ハイボールの苦い味が、まだ口の中に広がる。

まるで今の私の気持ちみたい…。

後日、こころから謝罪の電話があった。

「みおちん怖い思いさせちゃってごめんね!」

「無事に家に帰れたから大丈夫だよ〜。」

るいのことは、あえて言わないでおこう。