「ふーん、新学期早々デートですかぁ。リア充満喫してますねぇ~」

「い、いいだろ別にっ」



ほんのり赤く染まった顔を隠すようにプイッとそっぽを向いた東馬の顔を、頬杖をついて下から覗き込む。


今月で交際5ヶ月を迎えるというのに、未だにデートと言うとこの反応。

東馬いわく、実玖が可愛くて可愛くて仕方がないらしい。



「そういう景斗は? 雪塚さんとはどうなの?」

「えっ」



東馬の視線の先を追うようにゆっくりと振り向く。


ふわっと吹く風に、綺麗なロングヘアをなびかせながら、窓際の席で静かに読書をする女子生徒。


彼女の名前は雪塚葵さん。
1年の頃からのクラスメイトで、清楚な雰囲気が漂う優等生。

綺麗系の顔立ちで、クラスではおとなしいほうだけど、話してみると意外とノリが良くて、とても明るい。


勉強を教えてくれたり、俺のしょうもない話に付き合ってくれる優しい性格の持ち主で、何より、笑顔がものすごく可愛い。


そんな彼女に──俺は1年の頃からずっと片想いをしている。



「おい、見惚れてないで挨拶しに行けよ」

「ええ~っ、今読書中だから邪魔したくねーよ」



コソコソと言い争っていると、彼女が本をパタンと閉じてあくびをした。