お日さまみたいな温かい君に包まれて


「ゆ……雪塚さん?」



胸の鼓動が落ち着きを取り戻し、顔を上げると、雪塚さんが肩で息をしながら俯いていた。



「どうしたの⁉ どっか具合悪い⁉」

「いや……あそこに……」



震える手で指を差した先に視線を向ける。

そこには、長椅子にひっそりと座っているお化けがいた。


うっ、わ……ナイフ? 包丁? 身体中にめっちゃ突き刺さってる。

大きさや体つきからすると、人間の可能性もあるな……。


待合室の患者みたいに倒れるか、廊下で見たお化け達のように走り去っていくか。
それとも襲ってくるか……。



「……走ろう」

「えっ……?」



顔を上げた彼女に左手を差し出す。


今廊下には、他のお化けやお客さんはおらず、椅子に座っているお化けしかいない。

だから、こっちに飛び出してこない限り、走っても衝突はしないと思う。

もし襲いかかってきたとしても、一気に駆け抜ければすぐ振り切れる。


そう説明すると、雪塚さんは涙目でコクッと頷き、そっと右手を重ねてくれた。


震える手をギュッと握りしめる。



「よし、いくよ。3、2、いち……っ!」