お日さまみたいな温かい君に包まれて




「……実は俺んち、離婚したんだ」



ポツリと呟かれた後、流れていた水の音が止まった。



「……そっか。寂しくはないの?」

「うん。いずれ別れるだろうなとは思ってたから、やっと自由になれたって感じ。家族全員で話し合って、言いたいこと全部言ったし。後腐れもなく、スッキリ別れることができたから良かったよ」



手を拭きながら話す彼の瞳は、吹っ切れたような清々しい色をしていた。


去年の今頃、『直接謝りたい』と突然連絡が来て、数年ぶりに彼を家に呼んだ。


部活中に暴言を吐いたこと、意地を張って転校の話を直前まで黙っていたこと。
そして腹いせに、実玖に嘘の告白をして傷つけたこと。

事情があったとはいえ、精神が限界だったとはいえ、さすがに全部を許すことはできなかった。



『おい、転校ってなんだよ、説明しろよ』

『お前には関係ねーだろ』

『は? 部活はどうすんだよ、いきなり穴空けるつもりか⁉』

『もうみんなには話してる。良かったな、ライバルが減って』



修了式の日の放課後、最後に交わした会話が脳内を駆け巡る。

当時は自分のことで精一杯で、人がどんな悩みを抱えているかとか、事情があるかなんて、考えたり受け入れる余裕なんてなかった。