お日さまみたいな温かい君に包まれて

手を洗いながら近況を話し合う。



「小山は進路決まった?」

「あぁ。進学する予定。ひとり暮らししたいから、引っ越し資金を貯めるために、今バイトしてる」

「そっか。俺は就職。今バイトしてるところから社員の話もらったんだ」

「へぇ~、すげーじゃん」



小山の家はちょっと複雑で、引っ越したのも家庭の事情だった。

部活仲間の話によると、親の仲が悪かったらしい。


別居してるのか、それか離婚したのかは詳しく聞いたことがないからわかんないけど。



「……なぁ、妹は元気?」

「実玖のことか? もちろん。彼氏とイチャイチャして幸せに過ごしてるぞ」

「そう……なら良かった」



得意げに答えると、小山は切ない笑顔を見せた。


複雑な家庭だからこそ、俺の家庭が平和に見えて、劣等感を抱えていたみたいで。

俺だけじゃなくて、仲良くしていた実玖にも八つ当たりしてしまったそう。



「もう、せっかく会えたのにそんな顔すんなよ」

「あぁ……ごめん」



切なく笑ったのは、何の関係もない実玖を傷つけたのが許せなくて、『もう2度と実玖に会うな』と言ってしまったせい。

というのも、男子が苦手で引っ込み思案になってしまったのが、このことが原因だったから。