「はぁ……」
溜め息をつき、手洗い場の鏡と顔を合わせる。
いくら食いしん坊だからって、お茶を飲みながら呟くか⁉
しっかりしろ。今日はデートにし来たわけじゃなくて勉強しに来たんだぞ。
浮わつくなら花火大会の時にしろっ。
深呼吸し、冷水で手を洗って気持ちを切り替える。
すると、水の音が聞こえたと同時に個室から人が出てきた。
「あれ? 小山?」
「おおっ、清水!」
鏡越しに目が合い、挨拶を交わす。
黒地に白の花柄のシャツを着た、俺より少し背が低めの男子。
中学時代の部活仲間の小山 有悟だった。
「久しぶり。1年ぶりだっけ? また遊びに来たの?」
「おぅ。だってこっちに友達たくさんいるからな」
友人でもあり、部活のライバルでもあった小山は、中3になるタイミングで転校していった。
当時大喧嘩してて、仲直りできずに疎遠になっていたんだけど、去年再会して仲直りしたんだ。
ケンカの原因は、部活のことと家族のことと……まぁ色々。
若気の至りってやつかな。



