「お前に話したところで何になる?話して解決するなら誰も苦労しない」






「苦労はしないですけど、負担は軽くなります」






「負担だなんて思ってない。寧ろ、身内の不祥事が知られる方が嫌だ」






「不祥事があったからって俺が何か言うとでも?捜査一課の皆が何か言うとでも?馬鹿ですか、貴女?」






一颯と汐里のやり取りは言えば、子供の喧嘩のようにも聞こえる。
言っては返り、返っては言われる。
それに、一颯も汐里も頑固なのでどちらかが折れると言うことは恐らくない。
なので、この辺りで仲裁に入らなくてはなかなか話はまとまらない。






「誰が止める?」






「俺はパスで。瀬戸行け、Go!」







「Goじゃありませんよ、赤星さん!俺も嫌です!此処は二階堂さんに行って貰いましょうよ、この喧嘩の元凶の一人ですし」






「え、俺ってこの為に止められてたの?だったら、面白くも何ともないから逃げればよかった!」






誰も二人の言い合いを止めたがらない。
皆とばっちりを食いたくはないが、言い合いを仲裁しなくては埒もあかない。
二人の言い合いを止める権利というとばっちりを受けるのは結局最年長の椎名で、元ヤン節が炸裂する。
――と思われたが、不意に鳴った一颯のスマートフォンの着信に言い合いは一時中断された。






「母からです。電話に出ます」





一颯は一言断りを入れてから母、雅からの電話に出た。
一言二言交わしたかと思えば、一颯が泣きそうな顔になった。
近くにいた汐里達は父、久寿に何あったのかと思わざる終えなかった。
一颯は雅からの電話を切り、汐里達の方を見た。






「父が目を覚ましたそうです……」








「まじか!早く病院に行ってこい!」









赤星に促され、一颯は病院へと向かった。
そこで久寿が何の後遺症も残らず、元の生活に戻れることを医者から聞かされて母や妹と安堵するのだった。
その後、一颯は父と二人で話をした。
久寿が公安に協力した本当の訳をそこで一颯は聞かされた。
父から聞かされた本当の訳を聞いた彼はずっと考えていたことを父に話した。
自分の将来について――。