すると……。
「だからお世辞じゃないんだって。純粋に可愛いと思ったから言っただけだよ!」
西尾先輩が眉をひそめて立ち上がった。
ええ⁉ 本気で言ってたの⁉
「それが軽々しいんだよ! 今までに何人もの女子達にそう言って手のひらで転がしてきたのか?」
「してないよ! 失礼な!」
ヒートアップしていく2人。
ど、どうしよう……。
「実玖も! 『褒められたらたとえお世辞でも、ありがとうございますって言え』って、前に言っただろ!」
「は、はい……」
頭がこんがらがってきた。
つまり、西尾先輩には「可愛いと軽々しく言うな」で。私には「褒められたらお世辞でもお礼を言え」ってことだよね。
「もう! 景斗は俺が実玖ちゃんと仲良くするのが嫌なわけ⁉ そもそも、お前が俺の連絡先を実玖ちゃんに教えたじゃん! なんか矛盾してない?」
確かに。むしろ、『東馬は優しいから安心しろ』って、仲良くなるのを勧めてきたよね……?
「ちげーよ! 俺はただ……実玖が傷ついたら嫌なだけで……」
怒鳴っていた声がしぼみ、急に静かになった。
私のため……? 私が心ない褒め言葉で傷つかないか心配だったの……?



