シュールな光景を眺めていると……。



「あ、そうだ、実玖も俺らと同じ高校なんだよ」

「ひぇえ⁉ そぉなの⁉」



頬を引っ張ったまま兄が思い出したように口を開いた。

お兄ちゃん、そろそろ手を放してあげて。
西尾先輩が何言ってるかわかんない。


ようやく解放され、赤くなった頬を押さえる先輩に声をかける。



「あの、大丈夫ですか……?」

「うん、平気」



再びバチッと目が合い、全身が固まる。



「心配してくれてありがとう。お兄さんと違って優しいんだね」

「っ……いえ……」



にっこり笑った彼の目が再び三日月の形になり、心臓がトクンと音を立てた。



「あ、俺のことは東馬でいいよ! 高校でもよろしくね! あと、中学卒業おめでとう!」

「あ、ありがとうございますっ。よろしくお願いしますっ」



ペコッと頭を下げて部屋を後にし、自分の部屋に駆け込みドアに寄りかかった。


しっかりするんだ実玖。

ああいうタイプの人は、本気で人を好きにならないだから。


──好きになっちゃいけない。