「実玖ちゃんかぁ。可愛い名前だね!」

「えっ……⁉」



なんて考えていると、西尾くん……ではなく、西尾先輩は明るい声で口を開いた。


可愛い……⁉ いきなり何言い出すの……⁉


ふいうちの褒め言葉に思わず顔が熱くなり、同時に再び心臓がドクンドクンと鳴り始める。


落ち着け、これはただの社交辞令だ。
何の意味もないんだから期待しちゃダメ。


強く自分に言い聞かせ、ドキドキする胸を落ち着かせていると……。



「おい、妹をナンパするな」

「いてててっ!」



西尾先輩に後ろから抱きつき、頬っぺたをつねり始めた兄。

頭半個分の差。これは170センチもなさそう。



「別にナンパしようとしてたわけじゃなくて、ただ仲良くなりたかっただけだって!」

「実玖、こいつの言うことはほとんどがお世辞だから気にすんな」

「お世辞じゃないってば!」



「頬っぺたちぎれるー!」と悲鳴を上げる先輩。

お兄ちゃんは私の気持ちを考えているんだろうけど……もうその辺にしておいたほうが……。