褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「実玖ちゃんの気持ちはよくわかるよ。私も昔、周りからよく言われてたから」

「えっ!」



嘘! まさか仲間がいたなんて……!



「高校に入ってからはだいぶ減ったけど、小中学生の頃はしょっちゅう言われたよ。家族、先生、友達、同級生……誰にも相談できなかった」



切なそうな顔で語った雪塚先輩。

私はお兄ちゃんも同じ悩みを持っていたから、お互いに愚痴を吐いていたけれど、先輩は1人で抱え込んでたんだ……。

心細かっただろうなぁ。



「だから美術部に実玖ちゃんが来た時、この子とは仲良くなれるかも! って思ったの。困ったこととかがあったらいつでも言ってね」

「ありがとうございます……!」



嬉しさのあまり、部活中にも関わらず先輩に抱きついた。

お兄ちゃんが先輩を好きになった理由がわかったかもしれない。



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5月上旬。土曜日の昼下がり。



「実玖ちゃん! お待たせ!」

「先輩! こんにちは!」



バス停で雪塚先輩と待ち合わせ、バスに乗って服屋さんへ向かう。


先輩はベージュのジャケットとショートパンツのセットアップを着こなしていた。

オシャレな先輩に対し、自分は白のスウェットにデニムのロングスカート。


差がありすぎる……。