褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「ちょっとお兄ちゃん……」

「お前はちょっと黙ってろ。あー、ごめん、なんでもない…………は? 帰った?」



顔がだんだん険しくなっていく。


この口調からすると、多分電話相手は西尾先輩。

草山先輩の番号を知らなかったから、同じ部活の西尾先輩にかけたのかも。



「わかった……また明日話すから。じゃ。……人をケガさせといて逃げやがって」



「許さねぇ……」とドスの効いた声が聞こえ、慌てて口を開く。



「わざわざ呼び出そうとしなくていいから! そこまで酷いケガじゃないし……」

「バカ! その足じゃ練習できねーだろ!」

「っ……」



確かにそうだ。
そこまで痛みはないけれど、最低でも1週間は安静にしておかないといけない。

早く治ったとしても、いきなりヒール靴を履くのは危ないし……。



「……ごめんなさい」

「何も悪くないのに謝るな。須川くん、実玖のこと助けてくれてありがとう」

「いえ、お兄さんが来てくれて安心しました。清水さんお大事に」

「うん……ありがとう」



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──



「ほれ、着いたぞ」

「ありがとう」



帰宅し、ベッドにゆっくりと腰を下ろす。

1人で部屋に行こうとしたのだけど、兄の過保護が暴走したため、おんぶで運んでもらった。