「は、い……」
ふわっと鼻腔をくすぐる清潔感のある香り。
手のひらに広がるガッチリした感触。
そして、全身に伝わる体温。
「ご、ごめんなさ……っ」
真正面から抱きついてしまい、全身の温度がみるみる上がっていく。
恥ずかしさと申し訳なさと、考え事をした後悔と……色んな感情が一気に襲いかかってきて、もう頭の中はめちゃくちゃ。
「本当にごめんなさい! 今離れますからっ……!」
「待って」
急いで体を離そうとするも、それを阻止するかのように背中に腕が回ってきた。
え……い、一体何が起きてるの?
これじゃまるで、抱きしめられてるみたい……。
「あの、先ぱ……」
「落ち着いて。慌てて離れたら危ないよ」
冷静な口調でなだめられ、ハッと我に返る。
先輩は私がまたフラつかないように支えてくれているだけなのに。
それなのに、私は1人で焦って……。
「……ごめんなさい」
「もう、そのセリフ3回目」
「謝りすぎ」と言われながらも、心の中で何度も謝罪しながら体勢を整えてゆっくり体を離した。
「足は大丈夫? 痛くない?」
「はい。ありがとうございました……」



