褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「っていうか、なんでキリン? そこは子鹿って言わない?」

「え? お前子鹿ってサイズじゃねーだろ」

「まぁ……そうだけど……」



言い返す言葉も見つからず、「さぁ実玖ちゃん、ゆっくり歩いていきましょうねぇ~」と誘導されながら一歩ずつ歩いていく。

その口調、なんか腹立つなぁ……。



「ふぅ、実玖ばあちゃんの介護は疲れるなぁ。あ、東馬~! ちょっと来て~!」



色々とツッコみたい気持ちを抑えて、兄の視線のたどるように後ろを見る。

すると、被服室に戻ろうとしている西尾先輩と目が合った。



「は~い、どうした?」

「ちょっと便所行ってくるから、実玖の介護を頼む」



「んじゃ」と言い残して去っていった兄。
いきなり手を離され、足元がグラつく。



「おおっと……大丈夫?」

「す、すみませんっ。ありがとうございます」



バランスを崩した拍子に腕を掴んでしまい、全身の体温が一気に上がった。

ヒールが高い靴を履いているため、俯いた先に先輩の顔があって、顔を隠せない。



「大丈夫。俺支えてるから、ゆっくり歩こう」

「はい……」



はぁ、みんな1人で歩いているのに、私だけ補助つき。もう顔から火が出そう。