褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

一通り練習した後、美優紀さんは被服室から靴が入った箱を持ってきた。


私が受け取ったのは、つま先が少し尖ったデザインのシンプルな白いパンプス。

ヒールはそこまで細くはないけど、見た感じ10センチはありそうだ。


うぅ、初心者にこの高さは難度高いよ……。
せめて半分、5センチくらいのやつはないんですかー⁉

そう叫びたい気持ちを抑えて、壁に手をつきながら履いてみる。



「う、わっ……」



サイズはピッタリ。
しかし、足が震えてなかなか壁から手を離すことができない。

周りを見渡すと、全員多少フラつきながらも歩いている。


立ちっぱなしなの自分だけじゃん……! 早く歩かないと……!



「おいどうした、そんなへっぴり腰で。生まれたてのキリンみたいだぞ」



ハイヒールに苦戦している姿に気づいた兄が、つかつかとやってきた。

支えてもらいながら背中を伸ばし、壁から手を離す。



「どうだ、俺の見ている世界は。景色いいだろ~」

「う、うん……」



へぇ、お兄ちゃんや須川くんはこんな感じでみんなを見てるんだ。

可南子くらいの背丈の人からしたらわからなくもないけど、私の背丈からすると興奮する程の新鮮味はあまりないな。