褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「ではまず、壁に頭と肩甲骨、お尻、かかとをつけます。次に──……」



階段に座り、自分の番が来るまで他の生徒の様子を眺める。

時折、「うわ! きっつ!」「プルプルするー!」という叫び声が飛び交う。


どうしよう、長年猫背だから余計に緊張してきた……。



「お疲れ様~。はい、次の人~」

「はいっ……!」



恐る恐る階段を下りて壁に背中をつけた。


視線の先には大きな鏡。

よく見たら、右の肩が少し上がってる……。
これは平行にしたほうがいいよね。


……よし、あとは顎を引いて……。



「実玖ちゃん、もう少し肩の力抜いて。あと、呼吸していいからね?」

「はっ、はいっ!」



どうやらガチガチになりすぎて、息をするのを忘れていたようだ。

ううう……こりゃ叫びたくもなるよ……。
明日は全身筋肉痛になりそうだ……。




「アハハハハ! そんなにキツかったのかー?」

「しょうがないでしょ! お兄ちゃんみたいに経験者じゃないんだから!」



ゲラゲラ笑う兄を睨みながら帰路に就く。

苦しむ生徒が多い中、兄は1人余裕たっぷりの表情で立っていた。


すごいなぁって感心してたのに。
ぐぅぅぅ、腹立つぅぅ。