コップを洗い始めた彼の横顔を見つめる。


そういえば……口論してた時、結構強気で言い返してたな。それも全部私への褒め言葉が原因で。

初めて会った時はそこまで激しくなかったけど、頬っぺたつねられてたっけ。



「またからかってきたら、雪塚さんの名前出して反撃するつもり」



コップを洗い終え、クスッと笑みをこぼした西尾先輩。

反撃……もしや。



「……兄が、雪塚先輩を好きって知ってるんですか?」

「うん。今日もあからさまに動揺してたし、前に彼女と同じ香りまとってたし」



やっぱり知ってたんだ……!



「本当、わかりやすすぎますよね。あの反応はもう雪塚先輩にバレてると思います」

「やっぱり実玖ちゃんもそう思う?」



西尾先輩いわく、教室で雪塚先輩と話していると、「何話してるの?」と毎回会話に入ってくるそうで。

キツい口調も、先輩が来たらすぐおとなしくなるらしい。

想像したら笑いが込み上げてきた……。


コソコソと話していると。





──カチャッ。



「東馬ー? いるのー?」