褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

キッチンに向かい、冷蔵庫からお茶を取りだして、グビグビとのどに流し込んだ。



「あぁ~っ、生き返る~」



ふぅ、少しは涼しくなったかな。

再びコップにお茶を注いでいると、カチャッとドアの開く音がした。



「あ、実玖ちゃん」

「せっ、先輩……」



突然現れた西尾先輩に目が点になった。

私と同じようにのどが渇いたらしく、お茶を飲みに来たそうだ。


上がった体温を下げるように、再びお茶をのどに流し込む。

はぁ……こんな真夜中に先輩と会うなんて思ってなかったよ。



「パジャマ、可愛いね」

「っ、ありがとう、ございます」



ふいうちで褒められ、ぎこちなく返した。


あぁ、今すぐここから消えたい。
なんなら、このパジャマ姿も先輩の記憶から消し去りたい。

昼間、雪塚先輩を見て焦っていた兄の気持ちが今ならよくわかる。


お茶を飲む彼を横目でチラリ。


白いTシャツに黒のハーフパンツという、昼間の兄と同じようなラフな格好。なのに、全然ダサく見えない。

お母さんが元モデルだからか、姿勢が良くて立っているだけでもかっこいい。


お茶を飲み干した先輩から、ふわっと石鹸の香りが漂ってきた。

私達が使っている石鹸とは少し違う匂いがする。家から持ってきたのかな。