褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「あー、あんま帰省しないって言ってたな」

「昔は毎年帰ってたらしいんだけど、『交通費がかかるから無理しなくていいよー』って言われてさ」



スパゲッティを食べながら心の中で相槌を打つ。


新幹線の運賃と高速道路の料金とガソリン代。

ふと気になって調べてみたら、予想してた額よりも高くて、「え⁉ こんなに⁉」って部屋で叫んだんだよね。



「東馬は毎年帰ってるんだっけ」

「うん。近所に住んでるからよく遊びに行ってる。雪塚さんは?」

「たまに。でも、宿題以外に何もすることがないから暇なんだよね」

「わかる! 暇だよね! ここ数年は部屋で従兄弟達とずっとゲームしてるよ」

「みんなでゲームかぁ。楽しそうでいいなぁ」



兄に羨望の眼差しを向けながらお肉を頬張る雪塚先輩。

食欲があって良かったとホッとする一方で……。



「……年下の子でも容赦なくボコボコにしてそう」

「ん? 何か言った?」

「いや何も? 俺はお盆中も服作ってるよ〜」



……先輩、またサラッと誤魔化しましたけど、私の耳にはちゃんと聞こえてましたよ。

涼しい顔で話を続ける彼に心の中で語りかけたのだった。