「ねぇ、雪塚さんはその旅行、誰と行く予定なの?」
「えっ」
ワイワイした空気に戻ったのもつかの間。またも兄がやらかした。
行き先が同じだから興味本位で聞いただけなんだろうけど……もうちょっと空気読んでよ。
「一応……新婚旅行の予定、なんだ」
「キャ~! ロマンティック~!」
「マジで……⁉」
両手を口元に当てて興奮する西尾先輩に対し、目を見開いたまま固まる兄。
お兄ちゃんの気持ちを知っている自分が見ると、この状況はかなりカオスだ。
「ねぇねぇ! 好きなタイプも教えてよ!」
「あ……誠実で落ち着く人かな……」
「そっか~! 落ち着く人か~!」
テンションが上がり、好みのタイプを聞き出した西尾先輩。
呆然としている兄の背中をベシベシ叩いている。
これは……単にテンションが上がっているだけ?
それとも、お兄ちゃんの気持ちわかっててやってるのかな?
「そ、そういう2人も好きなタイプ教えてよ!」
恥ずかしくなったのか、雪塚先輩も負けじと尋ねた。
そういえば……西尾先輩、女子生徒と交流が多いわりには浮いた話聞いたことないんだよね。
どんな人が好きなんだろう。



