褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

「えっと……自然豊かな場所、ですかね。海とか山とか」



頭を捻ったわりには抽象的な答えが出てしまった。

よく考えたら、九州も沖縄も自然豊かじゃん。海も山もあるし。



「なんで実玖に聞くんだよ。実玖と旅行するつもりかー?」



その様子を見ていた兄が、お菓子をポリポリ食べながら冗談混じりに口を開いた。


一瞬にして凍りつく空気。

静寂に包まれた部屋にエアコンの音が鳴り響く。



「……なんでシラケるんだよ。図星か?」

「いや……俺はただ意見聞いただけで、一緒に旅行したいとは言ってないよ……」



先輩の声がだんだん小さくなっていく。

っ……そんなあからさまに恥ずかしそうな反応しないでくださいよ。こっちも恥ずかしいです。



「もしかして清水くん、俺も仲間に入れてよってやきもち妬いてるの?」

「えっ? 違うよ。まぁ……もし本当に行くなら、お土産忘れないでほしいかな」

「お前ってやつは……」



ちゃっかりお土産を要求する兄と、プルプルと肩を震わせ始めた西尾先輩。

そしてお茶目な顔で笑う雪塚先輩。


場を和ませてようと機転を利かせてくれた彼女に小さく頭を下げた。