褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

堪忍袋の緒が切れ、大声で暴言を吐いた。

その直後……心底後悔した。


しまった、西尾先輩がいるの忘れてた。

隣にいる雪塚先輩も気まずそうな顔をしている。


しーんと静まり返る空気に耐えきれず、逃げるように自分の部屋に入ろうとするも。



「おい、今のなんだよ……へ⁉ 雪塚さん⁉」

「あ、お邪魔してます」



ドアを開けた瞬間、間抜けな声を上げた兄。
驚いたのもつかの間、そのままドアをバタンと閉めてしまった。


それもそのはず。

前髪を頭の上で結んだちょんまげヘアに、オーバーサイズのTシャツとジャージの完全オフモード姿。

好きな人には絶対見られたくない格好だ。


そんな兄の気持ちを無視して、私は容赦なくドアを叩く。



「お兄ちゃん、開けるよ?」

「バカやめろ! 今着替えてんだよ!」

「実玖ちゃん、大丈夫だよ! 今お兄さん、クローゼット漁ってるだけだから! ちゃんと服着てるから安心して!」

「東馬……っ! お前は黙ってろ!」



ドアに耳を当てると、急いで引き出しを明け閉めする音が。

こりゃ慌てて服を探してるな……。


苦笑いする雪塚先輩と目を合わせ、ゆっくりとドアを開けた。