褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません

指をさして説明されるも、どちらも渦巻きに花びらをつけた花丸のような形。

元美術部の私でさえも、どこが違うのかさっぱりわからない。



「……なんだよ。絶句するくらい下手かよ」

「いや……もっと簡単な花あったでしょ。チューリップとかさ」



絵が苦手なのに、どうして難しい花を選んだんだろう。

そう言わんばかりに、黙り込んでいる雪塚先輩と顔を合わせる。



「……美術部に来て、わざわざ山を三つ描いて完成するような花を描く奴がいるかよ!」

「ごめん清水くん! 下手って言ってるわけじゃなくて! もう少し工夫したら上手く描けそうだなって思ってただけなの!」



恥ずかしくなったのか、兄は顔を真っ赤にしてプイッとそっぽを向いてしまった。


……これはプライドを傷つけちゃったかもしれない。ましてや好きな子の前で。お兄ちゃんごめんね。



「そうだ、実玖ちゃんはお兄さんの友達の西尾くんのことは知ってる?」

「はいっ。1度会ったことがありますっ」

「そっか。彼、手芸部に入ってて服を作るのが好きなの。もしかしたら仲良くなれるかもね」



兄を慰める雪塚先輩の口から、西尾先輩の名前が出てきて慌てて返事をした。

けれど……仲良くなれる⁉ 冗談ですよね⁉

っていうか、運動部じゃなくて手芸部なんだ。ちょっと意外だ。