その後お風呂に入って身支度を整え、12時の10分前には最寄り駅に着くように出発する。

由紀と落ち合うと、無言でぎゅー、と抱き締められた。
ごめんね、もう一度小さく謝る。

…ちなみに沙耶香の家ってどこなの?と聞かれたので、駅の目の前のタワーマンション、と指指すと、絶句していた。


「…大石さんとはちゃんと話せたの?」

駅ビルの比較的空いていたパスタ屋に腰を落ち着けて、メニューと睨めっこしていたら突然そう聞かれた。

「…うん、今朝話したよ」

「…そっか、良かった」

店員さんを呼び、私は魚介のペスカトーレを、由紀はカルボナーラを頼んだ。

「…それにしても昨日は私相当びっくりしたよー!」

と由紀が興奮気味に話し出す。

「まさか、沙耶香と同棲してる大石さんがウチの副社長だったなんて!」

「…同棲ではない、同居、ね…。それに私も知らなかったからめちゃくちゃ驚いたし」