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家に帰ると、やっぱり大石さんは帰っていなかった。
あの婚約者とまだ一緒にいるのだろうか。
ホテルに入って行った仲の良さそうな2人を思い出して、胸がちくん、と痛んだ。

自分の部屋に行き、クローゼットにしまっていたスーツケースを引っ張り出した。
ここへ来た時に持って来たスーツケース。

ー私は明後日の土曜日、ここを出て行くことに決めた。

クローゼットから洋服を出して畳む。
ここへ来た初日、大石さんから買ってもらったブランドの服が目に入る。

あの時のことを思い出して、また涙が溢れる。
もう、私の涙腺はどうかしている。

…この洋服たちは、置いていこう。
大石さんを、忘れるために…

泣きながら荷物を詰めて、でもスーツケースに収まりきらなかったものたちを見て思う。
随分と長い時間を私は大石さんと過ごして来たんだな…
ここへ来た時にはこのスーツケース1つで収まるくらいの荷物しかなかったのに…