教室を出てひと気のない廊下の奥へと進んでいく。


そこで江藤君は立ち止まった。


「昨日は本当にありがとう」


改めてお礼を言われるとなんだか照れくさくなってしまう。


「実は俺、真央のことが好きだったんだ」


その言葉にあたしは黙って頷いた。


それから江藤君は真央ちゃんと血がつながっていないこと、出会ったときから好きだったことを教えてくれた。


自分の気持ちをずっと隠してきたことも。


ここまでは前回までと同じだった。


しかし、そこからが少し違っていた。


「誕生会が終わった後、もう1度真央を散歩に連れ出したんだ」


「そうなんだ」


それはあたしたちがバスで帰った後の話だった。


「そこで好きだって伝えた」


江藤君の言葉はわかっていたはずなのに、なぜか胸の奥がむずむずとした。


どうしてこんな気持ちになるのかわからなくて、胸の前で右手をグーにして押し当てる。


「ダメだったけどな」


「え?」


「お兄ちゃんはお兄ちゃんだよって言われた」


江藤君はスッキリとした表情で言った。


振られたということなのに、どうしてそんな風に笑えるんだろう?