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男女混合の体育といっても、男子は体育館のステージ側。


女子は体育倉庫側を使ってそれぞれバレーをする授業だった。


運動があまり得意でないあたしは、朝からずっと体育の授業があるのが憂鬱な気分だった。


「江藤君って結構運動できるんだね」


一緒に得点係りをしていた里香がそう言うので、あたしは振り向いて男子のコートへ視線を向けた。


江藤君はコートに入っていてバレーボールを華麗に打ち返している。


「本当だ。意外だなぁ」


江藤君の存在を意識し始めてまだ少ししか経っていないけれど、ずっと音楽を聴いていて運動できるイメージはなかったのだ。


「江藤君って部活動やってるのかな?」


「さぁ、わからない」


里香の質問にあたしは首をかしげる。


でも、あれだけ運動神経がよければなにかしていそうだ。


そういうことも調べていくうちに大切になってくるだろう。


「はい、じゃあ得点係りと交代!」


体育の先生の合図にギョッとして視線を戻る。


見れば練習は終わっていて次はあたしがコートに入る番だった。


一気に気分が落ち込んでいく。


「ほら、行くよ!」


あたしの気持ちなんて少しも気がつくことはなく、里香は元気いっぱいにコートへ向かって歩き出したのだった。